朝、かかとに激痛が走り、足底腱膜炎と診断された。つらい痛みから一刻も早く解放されたいと、良かれと思って、様々なセルフケアを試したくなるかもしれません。しかし、その中には、かえって炎症を悪化させ、回復を遅らせてしまう「やってはいけないこと」も含まれています。症状をこじらせないために、避けるべき行動を正しく理解しておきましょう。まず、痛みが強い急性期に、最もやってはいけないのが、「痛む部分を強く揉む、マッサージする」ことです。炎症が起きている部分は、いわば火事が起きているような状態です。そこに、強い圧力を加えて揉みほぐすと、燃え盛る炎に油を注ぐようなもので、炎症をさらに助長し、腫れや痛みを増強させてしまいます。また、硬くなった腱膜を無理やり引き伸ばそうと、「痛みを我慢して、過度なストレッチを行う」のも禁物です。ストレッチは、回復期に、痛気持ちいい範囲で行うからこそ効果があるのであり、急性期に無理に行うと、微細な断裂を起こしている筋繊維を、さらに傷つけてしまうことになります。次に、意外と見落としがちなのが、「痛みを無視して、運動を続ける」ことです。特に、スポーツ愛好家の方は、「これくらいの痛みなら大丈夫」と、ランニングやジャンプ系の運動を続けてしまいがちですが、これは症状を慢性化させる最大の原因です。足底腱膜に、治癒する暇を与えず、繰り返し負担をかけ続けることで、組織はどんどん硬くなり、治りにくい状態になってしまいます。医師から許可が出るまでは、勇気を持って休むことが、結果的に早期復帰への近道となります。また、「合わない靴を履き続ける」のも、当然ながらNGです。底が薄くて硬い靴や、クッション性のないサンダル、ヒールの高い靴などは、足底腱膜への負担を直接的に増大させます。治療期間中は、意識的に、衝撃吸収性の高い、足に優しい靴を選ぶようにしましょう。そして、痛いからといって、「かかとをかばって、つま先立ちで歩く」ような、不自然な歩き方を続けるのも、ふくらはぎや、足の他の部分に新たな負担をかけ、二次的な痛みを引き起こす原因となり得ます。正しい治療と、正しいセルフケア、そして、やってはいけないことをしない勇気。この三つが揃って初めて、かかとの痛みは、快方へと向かっていくのです。