膀胱炎は、圧倒的に女性に多く発症する病気です。統計によれば、成人女性の2人に1人が、一生に一度は経験するとも言われています。なぜ、これほどまでに女性は膀胱炎になりやすいのでしょうか。その理由は、男性とは異なる、女性特有の体の「解剖学的な構造」にあります。膀胱炎の主な原因は、大腸菌などの細菌が、尿の出口である尿道口から侵入し、膀胱にまで達して、そこで増殖・炎症を起こすことです。この細菌の侵入しやすさが、男女で大きく異なるのです。まず、第一の理由が「尿道の長さ」です。男性の尿道が約15~20センチメートルの長さがあるのに対し、女性の尿道は、わずか3~4センチメートルと、非常に短いのが特徴です。そのため、尿道口から侵入した細菌が、膀胱まで到達するのに要する距離が短く、簡単に膀胱内にたどり着いてしまうのです。第二の理由は、「尿道口の位置」です。女性の尿道口は、細菌の温床となりやすい、膣や肛門と非常に近い位置にあります。特に、排便後、トイレットペーパーで拭く際に、後ろから前へ拭いてしまうと、肛門の周りにいる大腸菌を、尿道口に運んできてしまう危険性があります。これが、膀G胱炎の最大の原因菌が大腸菌である所以です。第三に、「性行為」も、細菌が尿道口から侵入する大きなきっかけとなります。性行為によって、膣の周りの細菌が尿道口に押し込まれやすくなるためです。新婚の女性に膀胱炎が多いため、「ハネムーン膀胱炎」という俗称があるほどです。さらに、妊娠や月経、更年期といった、女性ホルモンのバランスが変化する時期も、膀胱炎になりやすくなります。例えば、妊娠中は、大きくなった子宮が膀胱を圧迫して残尿感が生じやすくなったり、ホルモンの影響で尿の流れが滞りやすくなったりします。また、閉経後は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、膣の自浄作用が低下し、細菌が繁殖しやすくなるのです。これらの解剖学的・生理学的な要因が、女性を膀胱炎になりやすい体質にしています。これは、決して不潔だからというわけではなく、女性であれば誰にでも起こりうる、構造的な宿命とも言えるのです。