子供の水いぼが、なかなか治らなかったり、増え続けたりすると、保護者の方は、病院での治療以外の方法にも、つい頼りたくなってしまうものです。インターネットで検索すると、「はと麦茶が効く」「イソジン(ポビドンヨード)で消毒すると治る」「木酢液が良い」といった、様々な民間療法に関する情報が溢れています。しかし、これらの方法は、本当に効果があり、そして安全なのでしょうか。医学的な観点から、その真偽を冷静に考える必要があります。まず、「はと麦(ヨクイニン)」についてです。ヨクイニンは、はと麦の皮を剥いた種子から作られる生薬で、古くから、いぼや肌荒れの改善に用いられてきました。皮膚の新陳代謝を高め、免疫力を調整する作用があるとされ、実際に、ウイルス性のいぼ(尋常性疣贅)や、水いぼの治療に対して、皮膚科で補助的に処方されることもあります。しかし、その効果は非常に緩やかで、個人差も大きいのが実情です。飲んですぐにいぼが消えるような、特効薬としての効果は期待できません。あくまで、体質改善の一環として、気長に試してみる、という位置づけです。次に、「イソジン(ポビドンヨード)での消毒」です。イソジンは、強力な殺菌・消毒作用を持つ薬剤です。水いぼの原因であるウイルスにも、ある程度の効果がある可能性は否定できません。しかし、その一方で、イソジンは、正常な皮膚細胞に対しても強い刺激を与えてしまいます。特に、バリア機能が弱い子供の皮膚や、乾燥しているアトピー性皮膚炎の皮膚に使用すると、かぶれ(接触皮膚炎)を引き起こすリスクが非常に高いです。かぶれによってかゆみが生じ、そこを掻き壊すことで、かえって水いぼを広げてしまう、という本末転倒な結果になりかねません。また、「木酢液(もくさくえき)」などの酸性の液体を塗る方法も同様で、皮膚への刺激が強く、化学やけどのような状態になる危険性があり、医学的には推奨されません。民間療法は、科学的な根拠が乏しいものが多く、時には健康被害に繋がるリスクも伴います。効果が証明されていない方法に頼る前に、まずは皮膚科医という専門家とよく相談し、医学的に確立された、安全な治療法を選択することが、お子さんの肌を守るための、最も賢明な道なのです。