夏が近づき、プールの季節になると、水いぼのあるお子さんを持つ保護者の方から、必ずと言っていいほど聞かれるのが、「このままプールに入れてもいいのでしょうか?」という質問です。これは、周りの子供への感染を心配する、保護者の方の当然の悩みと言えるでしょう。この問題に対する、現在の医学界や教育現場での一般的な考え方を知っておくことが重要です。まず、日本皮膚科学会や日本小児皮膚科学会などの専門学会の見解としては、「水いぼがあるからといって、プールの参加を禁止する必要はない」というものが、統一的なコンセンサスとなっています。その理由は、前述の通り、プールの水そのもので水いぼがうつる可能性は極めて低く、感染の主な原因は、皮膚の直接的な接触や、タオルやビート板などの物品の共用にある、と考えられているからです。つまり、プール自体を禁止しても、日常生活の中での接触でうつる可能性はあるため、プールだけを特別に制限する医学的な根拠は乏しい、という立場です。この見解に基づき、文部科学省や厚生労働省も、基本的には「プールの参加は可能」という指針を示しています。しかし、これはあくまで「原則」です。実際の現場では、各保育園、幼稚園、学校、あるいはスイミングスクールが、集団感染の拡大を防ぐために、独自のルールを設けていることが少なくありません。例えば、「水いぼが多数ある場合や、掻き壊している場合は、治るまで参加を控えてください」といった内規があったり、他の保護者への配慮から、ラッシュガードなどで患部を覆うことを条件に参加を認める、という園もあります。また、医療機関によっては、医師が「治癒証明書」や「登園許可証」を発行するまで、プールの参加を許可しない、という方針のところもあります。したがって、保護者としてとるべき対応は、まず、通っている園や学校、スイミングスクールに、「水いぼがある場合の、プールの参加に関するルール」を、直接確認することです。そして、もし参加が許可された場合でも、他の子供への感染リスクを少しでも減らすために、タオルの共用は絶対にしない、ビート板を使った後はシャワーで体をよく洗い流す、といった配慮を、お子さんにもよく言い聞かせることが大切です。医学的な見解と、集団生活の場でのルール、その両方を尊重し、周りへの思いやりを持って行動することが求められます。