私が初めて自分の脇のニオイを自覚したのは、中学二年生の合唱コンクールの練習中でした。隣の席の友人がふと鼻をつまむ仕草を見せた瞬間、心臓が凍りつくような衝撃を受け、それまでの無邪気な自分は一瞬にして消え去りました。それからの毎日は、自分が周囲に不快な思いをさせているのではないかという恐怖との戦いでした。授業中も脇を固く閉じ、休み時間になれば真っ先にトイレへ駆け込んで制汗シートで何度も何度も皮膚を擦りました。しかし、洗えば洗うほど皮膚は荒れ、そのストレスから冷や汗をかき、ニオイはむしろ鋭さを増していくようでした。母に相談しても「毎日お風呂に入っているのだから大丈夫よ」と言われるだけで、私の心の奥底にある孤独な問いには答えてくれませんでした。インターネットもまだ十分に普及していない時代、私は一人で脇が臭い理由を必死に考え、あらゆるデオドラント剤を小遣いで買い漁りましたが、どれも香料とニオイが混ざり合って余計に不自然な香りになるだけでした。転機が訪れたのは、高校生になってから勇気を出して訪れた皮膚科での診察でした。医師は私の切実な悩みを笑うことなく受け止め、アポクリン腺の仕組みや、日本人の約一割が同様の体質を持っていることを丁寧に説明してくれました。私が悪いのではなく、単なる遺伝的な特性なのだと教えられたとき、数年間にわたって私を縛り付けていた重い鎖がようやく外れたような感覚がありました。それからの私は、医学的な知見に基づいたケアを取り入れ始めました。アルコールを含まない低刺激の殺菌剤を使い、衣類の素材もポリエステルなどの化学繊維を避け、通気性の良い綿やシルクを選ぶようにしました。また、食生活においても肉類や乳製品の過剰な摂取を控え、和食を中心とした生活に切り替えたところ、ニオイの質が明らかに穏やかになっていくのを実感しました。今の私は、自分の体質を隠すべき恥だとは考えていません。適切に対処すれば十分にコントロールできることを知ったからです。あの合唱コンクールの日の絶望があったからこそ、私は自分の身体を人一倍丁寧に労わる習慣を身につけることができました。脇の悩みを恐れるのではなく、それを自分の身体からの「適切なケアを求めています」というサインとして受け入れる。その心の持ちようこそが、私に本当の意味での自信を授けてくれたのです。
青春時代を支配した脇の悩みから解放された日