あれは記録的な猛暑が続いていた七月の終わりのことでした。保育園に通う三歳の娘がヘルパンギーナにかかり、三日ほど高熱と口の痛みに泣き叫んでいたのですが、ようやく娘が元気を取り戻した頃、今度は私の喉に異変が起きました。最初は少しイガイガする程度の違和感でしたが、翌朝には唾液を飲み込むたびに喉にカミソリの刃が刺さるような激痛が走り、鏡で喉の奥を確認して私は絶句しました。そこには、赤く腫れ上がった粘膜の上に、不気味な赤いぶつぶつと白い小さな水疱がいくつも点在していたのです。体温を測ると一気に三十九度五分まで跳ね上がり、全身の関節がバラバラになるような倦怠感に襲われました。大人が夏風邪にかかると重いという噂は聞いていましたが、これほどまでとは想像もしていませんでした。病院を受診したところ、医師からは「お子さんから移ったヘルパンギーナですね。大人の場合は粘膜のダメージが深く出るんです」と告げられました。特効薬はないため、処方されたのは鎮痛剤と喉の炎症を抑える薬だけ。それからの三日間はまさに生き地獄でした。喉の奥のぶつぶつが潰瘍に変わったのか、水を一口飲むのにも決死の覚悟が必要で、栄養補給はゼリー飲料をストローで喉の奥に直接流し込むのが精一杯でした。夜も喉の痛みで何度も目が覚め、鏡を見るたびに「このぶつぶつはいつ消えるのだろう」と不安で涙が出ました。結局、熱が下がるまでに四日間、喉の痛みが完全に引くまでに十日間を要しました。驚いたのは、痛みが消えた後も、喉の奥の赤いザラザラとしたぶつぶつだけは一ヶ月近く残っていたことです。再診した際、先生は「これはリンパ組織が頑張って戦った跡だから、無理に消そうとしなくて大丈夫ですよ」と言ってくれましたが、自分の体が受けたダメージの大きさを物語っているようで、鏡を見るのが怖かった時期を思い出します。この経験から学んだのは、大人の健康を過信してはいけないということです。特に子供の病原体は大人の免疫を簡単に突破し、想像を絶する不調を招きます。それ以来、私は家の中での手洗い、うがい、タオルの使い分けを徹底するようになりました。あの喉の奥の赤いぶつぶつを見た瞬間の恐怖と、その後の壮絶な痛みは、私の人生において最も過酷な一週間として記憶に刻まれています。今、同じように喉の異変に驚いているお母さんやお父さんがいたら、伝えたいです。それはあなたの体が今、最強の敵と戦っている証拠です。無理をせず、一刻も早く休息を取って、プロの助けを借りてください。