私がエアコン病という言葉を身を以て体験し、その恐ろしさを痛感したのは、都内の大手企業で働いていた二十代後半の夏のことでした。私の部署はパソコンが密集している関係で、一年中空調が強く設定されており、特に夏場は男性社員の体感温度に合わせて設定温度が二十三度という極寒のオフィス環境に置かれていました。当時は若さもあり「少し寒いな」と感じる程度で我慢していましたが、次第に身体に異変が起き始めました。最初は夕方になると足がパンパンに浮腫み、靴が履けなくなる程度の症状でしたが、一ヶ月が過ぎる頃には、朝起きた瞬間に全身が鉛のように重く、どれだけ寝ても疲れが取れない慢性的な疲労感に悩まされるようになったのです。さらに深刻だったのは、胃腸の不調です。真夏なのに温かいものしか受け付けなくなり、冷たい水を一口飲むだけでお腹を下すという、消化器の機能が著しく低下した状態に陥りました。病院を受診しても特定の疾患は見つからず、医師からは自律神経の乱れ、いわゆるエアコン病であると診断されました。エアコン病とは単なる冷え性ではなく、冷気という物理的なストレスによって身体のスイッチが壊れてしまう病気なのだと教えられたとき、私は自分の体力を過信していたことを激しく後悔しました。そこから私の長い回復の道のりが始まりました。まず職場のデスクでは、厚手のカーディガンに加え、夏用の腹巻とレッグウォーマーを常備し、足元には保温性の高いクッションを敷いて冷気を物理的に遮断しました。飲み物も氷入りのものは一切やめ、季節外れの白湯や温かい紅茶をマイボトルで持参するように徹底しました。最も効果を実感したのは、週末にサウナや岩盤浴に通い、強制的に汗をかく習慣を取り入れたことです。冷房に晒され続けた私の汗腺は完全に閉じてしまっていましたが、熱い環境で意識的に発汗させることで、眠っていた体温調節機能が徐々に再起動していくのを感じました。三ヶ月ほどこうした「温活」を続けた結果、あんなに酷かった浮腫みや頭痛が嘘のように消え去り、食事も以前のように美味しく食べられるようになったのです。エアコン病とは、私たちが作り出した不自然な冬に対する身体の必死の抵抗だったのだと今は理解しています。職場環境を自分で変えることは難しくても、自分の身を守る装備を整え、プライベートの時間を使って自律神経をメンテナンスすることは可能です。あの地獄のような夏の経験があったからこそ、私は今の健康的な生活習慣を手に入れることができました。もし今、オフィスの寒さに耐えながら不調を感じている人がいたら、我慢を美徳とせず、一刻も早く自分の自律神経を温めてあげてほしいと思います。あなたの身体を守れるのは、会社でも上司でもなく、あなた自身の小さな気遣いと知識だけなのですから。