介護認定を受けるには、医学的な裏付けとなる「主治医意見書」の内容が判定に極めて大きな影響を及ぼしますが、多くの患者や家族が、医師とのコミュニケーション不足によって、実態よりも軽い判定を受けてしまうという課題に直面しています。医師は診察室で見せる数分間の様子で意見書を書かなければなりませんが、高齢者の多くは医師の前では緊張して「元気なふり」をしたり、痛みを我慢したりするため、医師が日常の介護の大変さを十分に把握できていないことが多々あります。これを解決するためのアドバイスとして、まず徹底していただきたいのは、診察の際に「ADL(日常生活動作)の具体的な困りごと」を記した手紙を持参することです。単に「歩けません」と言うのではなく「夜中にトイレに行く際に五分以上かかり、途中で座り込んでしまう」「最近、お箸の使い方が分からなくなり、手掴みで食べるようになった」といった、具体的な時間や動作、頻度をエピソードとして伝えます。特に認知症の周辺症状、例えば怒りっぽくなって家族に暴言を吐く、夜間に眠らず声を出す、同じものを大量に買い込んでしまうといった「介護負担」に直結する情報は、医療的なデータ以上に認定審査会で重視されます。もし医師に直接言いにくい場合は、受付で「介護認定のための資料です」と看護師に渡しておくのも一つの方法です。また、意見書を作成してもらう医師の選定も重要です。専門性が高いが半年に一度しか会わない大学病院の医師よりも、月一度、血圧の管理などで顔を合わせ、近況をよく知っている地域の「かかりつけ医」に依頼する方が、生活実態に即した内容になりやすいです。受診時には、家族が付き添い、本人の言葉を否定するのではなく「先生、実は家ではこういう様子もあるんです」と補足する形で、多角的な視点を医師に提供しましょう。医師は、医学的な管理の必要性(透析、インスリン注射、床ずれの処置など)については詳細に把握していますが、それ以外の「生活のしづらさ」については家族からの情報が頼りなのです。介護認定を受けるには、医師にあなたの家の茶の間の風景を想像させるほどの、生きた情報を届ける努力が必要です。医師を「診察する人」としてだけでなく、介護というプロジェクトの「共同責任者」として信頼し、包み隠さず情報を共有することが、結果として本人に最もふさわしい、温かな支援の手を差し伸べるための唯一の鍵となるのです。
主治医意見書を適切に作成してもらうための医師との対話術