キリキリとした差し込むような痛み、あるいは、どんよりと重苦しい不快感。胃の痛みは、多くの人が経験するありふれた症状ですが、その原因は様々です。いざ、つらい痛みで病院へ行こうと思った時、「この症状は、一体何科で相談すれば良いのだろう」と迷ってしまうことは少なくありません。適切な診療科を選ぶことは、迅速な診断と効果的な治療への第一歩です。胃の痛みを診る中心的な役割を担うのは、「消化器内科」です。消化器内科は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化管と、肝臓、胆嚢、膵臓といった、消化に関わる臓器全般の病気を専門とする診療科です。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、そして胃がんなど、胃の痛みを引き起こす多くの病気が、この診療科の対象となります。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)などの専門的な検査を用いて、胃の粘膜の状態を直接観察し、正確な診断を下すことができます。次に、一般的な「内科」や「総合内科」、あるいは、普段から通っている「かかりつけ医」も、最初の相談窓口として非常に適しています。特に、胃の痛みだけでなく、発熱や咳、全身の倦怠感といった、他の症状も伴う場合は、体全体を総合的に診てくれる内科医が頼りになります。そこで、より専門的な検査が必要と判断されれば、消化器内科へ紹介してもらう、という流れがスムーズです。また、ストレスが原因で胃の痛みが起きていると考えられる場合は、「心療内科」が選択肢となることもあります。検査をしても器質的な異常が見つからないにもかかわらず、痛みが続く場合、心療内科では、心理的な側面からのアプローチで、症状の緩和を目指します。そして、見逃してはならないのが、胃以外の臓器が原因で、みぞおちに痛みを感じるケースです。例えば、「胆石症」や「急性膵炎」、そして、最も危険なのが「心筋梗塞」です。胸の圧迫感や、背中への放散痛、冷や汗などを伴う場合は、迷わず循環器内科や救急外来を受診する必要があります。