社会人になって初めて迎えた夏、私は、見事に夏バテと、それに伴う腹痛の洗礼を受けました。慣れないスーツに身を包み、営業職として炎天下を歩き回る毎日。汗だくでオフィスに戻ると、今度は、まるで冷蔵庫の中にいるかのような、ガンガンに効いた冷房が出迎えます。そんな生活で、私の唯一の楽しみであり、救いだったのが、仕事終わりに飲む、キンキンに冷えたビールと、コンビニで買うアイスクリームでした。食事も、喉を通りやすいという理由だけで、冷やし中華やざるそば、そうめんといった、冷たい麺類ばかり。温かいものを口にするという発想は、すっかり頭から消え去っていました。最初は、軽い食欲不振と、下痢気味かな、という程度でした。しかし、お盆を過ぎたあたりから、症状は明らかに悪化しました。食事をした後、必ずと言っていいほど、お腹がグルグルと鳴り出し、差し込むような痛みに襲われるのです。トイレに駆け込むと、水のような下痢。それが、一日に何度も繰り返されるようになりました。あまりの下痢のひどさに、仕事にも集中できず、常にトイレの場所を気にしながら、青い顔で過ごす日々。これはただ事ではないと感じ、私は意を決して、消化器内科のクリニックを受診しました。医師に、ここ最近の食生活を正直に話すと、先生は、半ば呆れたように、しかし優しく言いました。「それは、お腹が悲鳴を上げるのも無理ないですよ。君の胃腸は、今、完全に冷え切って、ストライキを起こしている状態だね」。診断は、冷たいものの過剰摂取による、腸の機能低下と、自律神経の乱れからくる、過敏性腸症”候群に近い状態、とのことでした。その日から、私の食生活改善が始まりました。まずは、全ての飲み物を、常温の水か白湯に変えること。食事は、消化の良い、温かいおかゆやうどんから再開しました。あれほど愛していたビールとアイスも、きっぱりと断ちました。回復には、一週間以上かかりましたが、この経験を通して、私は、自分の体をいたわることの重要性を、身をもって知ったのです。
冷たいものの摂りすぎで腹痛になった私の夏