それは、一本の電話から始まりました。クライアントとの重要な電話会議の最中、一度話し始めると、咳が止まらなくなってしまったのです。最初は、空気が乾燥しているせいかと思いましたが、その日を境に、私の咳はどんどんひどくなっていきました。特に、夜ベッドに入って体が温まると、まるで喘息の発作のように、激しい咳がこみ上げてきて、眠りにつくことができません。日中も、電車の中や、静かなオフィスで、一度咳き込むと周りの視線が気になり、精神的にも追い詰められていきました。最初は、近所の内科を受診し、「風邪の後の気管支炎でしょう」と、咳止めと抗生物質を処方されました。しかし、一週間薬を飲み続けても、症状は一向に改善しません。むしろ、夜中の咳は悪化しているようにさえ感じられました。このままでは仕事にもならないと、私は藁にもすがる思いで、インターネットで「咳、止まらない」と検索し、呼吸器専門のクリニックを見つけました。呼吸器内科の診察は、これまでの内科とは全く異なるものでした。医師は、私の咳の音や、咳が出るタイミング、痰の有無などを非常に詳しく尋ね、聴診器で丁寧に胸の音を聞いた後、「おそらく、咳喘息の可能性が高いですね」と言いました。そして、呼吸機能検査という、機械に向かって息を思い切り吸ったり吐いたりする検査を行いました。その結果、気道が狭くなっていることが数値で示され、診断は確定しました。処方されたのは、咳止めではなく、気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」でした。医師の指導通りに、毎日吸入を始めると、その効果は劇的でした。あれほど私を苦しめていた夜中の咳が、数日で嘘のように治まり、久しぶりに朝までぐっすりと眠ることができたのです。あの時の安堵感は、今でも忘れられません。ただの「長引く風邪」だと自己判断せず、専門家の扉を叩いたことで、私はようやく、このつらい咳のトンネルから抜け出すことができました。咳が主役の不調は、呼吸器の専門家へ。この経験は、私にとって大きな教訓となりました。
私が長引く咳で呼吸器内科を受診した体験談