片足に時々感じる、軽いしびれ。「そのうち治るだろう」「大したことはない」と、つい放置してしまってはいないでしょうか。しかし、そのしびれが、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった、神経の圧迫によるものである場合、適切な治療を受けずに放置し続けると、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。神経は、圧迫され続けると、徐々にその機能を失っていきます。最初は、ジンジン、ピリピリといった「感覚の異常」として現れますが、圧迫が長期化・重症化すると、筋肉を動かす「運動神経」にまで、障害が及んでくるのです。その結果として、まず現れるのが「筋力の低下」です。例えば、足首を上に反らす力が弱くなり、歩いていると、つま先が引っかかって、何もないところでつまずきやすくなる(下垂足)。あるいは、ふくらはぎの筋肉が弱くなり、つま先立ちができなくなるといった症状です。日常生活の中では、「スリッパが意図せず脱げてしまう」「階段の上り下りが怖い」といった形で、自覚されることもあります。さらに症状が進行すると、目に見える変化として、「筋肉の萎縮」が起こります。神経からの指令が届かなくなった筋肉は、栄養を得られず、やせ細ってしまうのです。特に、すねの筋肉や、ふくらはぎの筋肉が、健康な方の足と比べて明らかに細くなってきたら、それは神経麻痺がかなり進行しているサインです。一度萎縮してしまった筋肉は、たとえ手術で神経の圧迫を取り除いたとしても、完全に元の太さや力強さに戻ることは、非常に困難です。そして、最も重篤な後遺症が、「膀胱直腸障害」です。これは、腰の神経の中でも、排尿や排便をコントロールする、非常に重要な神経(馬尾神経)が、強く圧迫されることで生じます。「尿が出にくい、あるいは全く出ない(尿閉)」「尿意を感じない」「便失禁を起こす」といった症状が現れ、これは緊急手術が必要となる、極めて危険な状態です。しびれは、あなたの体が発している、助けを求める悲鳴です。それは、単なる不快な感覚ではなく、神経がダメージを受けているという、紛れもない証拠なのです。感覚が鈍くなってきた、力が入らないと感じたら、それは「放置してはいけない」という、最後の警告です。手遅れになる前に、専門医の診察を受ける勇気を持ってください。
そのしびれ放置するとどうなるのか