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風邪くらいと思わずかかりつけ医に相談
「風邪くらいで病院へ行くのは大袈裟だ」。そう考えて、多少の体調不良は、市販薬や気力で乗り切ろうとする人は少なくありません。しかし、この「風邪くらい」という油断が、時に症状を長引かせたり、重大な病気の見逃しに繋がったりすることもあります。そんな時、気軽に、そして安心して相談できる「かかりつけ医」の存在は、私たちの健康を守る上で、非常に大きな意味を持ちます。かかりつけ医を持つことの最大のメリットは、その「継続性」にあります。かかりつけ医は、あなたが一過性の患者ではなく、一人の生活者として、継続的に診てくれます。そのため、あなたの普段の健康状態や、過去の病歴、アレルギーの有無、家族構成や生活背景まで、幅広く把握してくれています。この情報があることで、今回の風邪の症状が、いつものパターンなのか、それとも何か注意すべき点があるのかを、より深く、そして的確に判断することができるのです。また、かかりつけ医は「総合的」な視点を持っています。風邪の症状の裏に、別の病気が隠れていないか、あるいは、持病が悪化する引き金になっていないか、といった、体全体のバランスを考慮した診察をしてくれます。そして、かかりつけ医のもう一つの重要な役割が、地域医療の「案内役」としての機能です。診察の結果、より専門的な検査や治療が必要だと判断されれば、あなたの症状に最も適した専門医(呼吸器内科、耳鼻咽喉科、循環器内科など)や、地域の基幹病院へ、スムーズに紹介状を書いてくれます。自分で一から専門病院を探す手間が省け、紹介状があることで、専門医側も、あなたの情報を事前に把握した上で、診察を始めることができるのです。風邪は、万病の元とも言われます。体の不調を感じた時に、「とりあえず、あの先生に相談してみよう」と思える、信頼できるパートナーがいるという安心感は、何物にも代えがたいものです。健康な時から、自分に合ったかかりつけ医を見つけておくこと。それは、未来の自分への、最も賢い投資と言えるでしょう。
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夏風邪と腹痛の関係、お腹にくる風邪とは
夏になると流行する、いわゆる「夏風邪」。その原因となるウイルスの中には、咳や鼻水といった、一般的な呼吸器症状だけでなく、腹痛や下痢、嘔吐といった、お腹の症状を強く引き起こすタイプが存在します。これを、俗に「お腹にくる風邪」や「夏型胃腸炎」と呼びます。夏風邪の代表的な原因ウイルスである、「アデノウイルス」や「エンテロウイルス」、「コクサッキーウイルス」などは、高温多湿の環境を好むため、夏に活発になります。これらのウイルスは、口や鼻から体内に侵入した後、喉だけでなく、胃や腸の粘膜にも感染し、増殖します。そして、胃腸の粘膜に炎症を起こすことで、腹痛や下痢、吐き気といった、消化器症状を引き起こすのです。症状の特徴としては、まず、発熱や喉の痛み、全身の倦怠感といった、風邪の初期症状が現れ、それとほぼ同時に、あるいは少し遅れて、お腹の症状が出始めることが多いです。腹痛は、おへその周りを中心とした、差し込むような痛みであることが多く、下痢は、水のような便(水様便)が、一日に何度も続く傾向があります。細菌性の食中毒と比べると、症状は比較的マイルドなことが多いですが、子どもや高齢者の場合は、嘔吐や下痢による脱水症状に陥りやすいため、特に注意が必要です。この、お腹にくる夏風邪の治療には、特効薬はありません。原因がウイルスであるため、抗生物質は効きません。したがって、治療の基本は、つらい症状を和らげる「対症療法」と、体の免疫力がウイルスに打ち勝つのを助けるための「安静」、そして「水分補給」となります。下痢や嘔吐がある場合は、無理に食事を摂る必要はありません。胃腸を休ませることを優先し、経口補水液や、カフェインの入っていない麦茶などで、失われた水分と電解質を、少量ずつ、こまめに補給することが、何よりも大切です。症状が落ち着いてきたら、消化の良いおかゆなどから、少しずつ食事を再開していきます。たかが夏風邪と侮らず、脱水症状のサイン(尿の量が減る、口の中が乾く、ぐったりする)が見られたら、速やかに医療機関を受診してください。
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私が足のしびれで整形外科を受診した日
私の右足に、奇妙な違和感が現れ始めたのは、40歳を過ぎた頃でした。最初は、長時間デスクワークをした後に、お尻から太ももの裏にかけて、ピリピリとした軽いしびれを感じる程度でした。ストレッチをすれば治まるので、疲れが溜まっているのだろうと、軽く考えていました。しかし、症状は徐々に、そして確実に進行していきました。しびれはふくらはぎ、そして足先まで広がり、まるで自分の足ではないかのような、一枚皮を被ったような感覚に襲われるようになったのです。特に、朝起きて顔を洗おうと前かがみになった時や、長時間車を運転した後に、激痛に近いしびれが走るようになりました。これはただ事ではないと、インターネットで症状を検索し、「坐骨神経痛」や「椎間板ヘルニア」という言葉に行き着きました。そして、次に悩んだのが「何科へ行くべきか」ということです。しびれだから神経内科か、それとも腰が原因なら整形外科か。私は、おそらく腰の骨や筋肉に問題があるのだろうとあたりをつけ、近所の整形外科クリニックの扉を叩きました。診察室では、医師が私の話を丁寧に聞き、足を上げたり、体を反らしたりするテストで、痛みが誘発されるかを確認しました。そして、「ヘルニアの可能性が高いですね。詳しく見るためにMRIを撮りましょう」ということになりました。後日、MRIの画像を見ながら、医師は「やはり、腰椎の4番目と5番目の間で、椎間板が飛び出して、右足へ行く神経を圧迫しています」と、はっきりと原因を告げてくれました。病名が確定したことで、先の見えない不安は消え、これから治療に専念しようという前向きな気持ちになれたことを、今でも覚えています。あの時、運動器の専門家である整形外科を選んだことが、スムーズな診断と治療への第一歩だったと確信しています。
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かかとの痛みに耐えた私の足底腱膜炎体験
私の右足のかかとに、異変が訪れたのは、40代も半ばに差し掛かった頃でした。健康のためにと、週末にジョギングを始めて数ヶ月が経ったある朝、ベッドから降りた瞬間、右のかかとに、まるで釘を踏み抜いたかのような、鋭い痛みが突き抜けました。思わず「痛っ!」と声を上げ、その場にへたり込んでしまいました。骨にヒビでも入ったのかと本気で心配しましたが、しばらく足を引きずりながら家の中を歩いていると、痛みは少しずつ和らいでいきました。その日は、筋肉痛の一種だろうと、軽く考えていました。しかし、翌朝も、その次の朝も、目覚めの一歩目は、必ず激痛に襲われるのです。日中も、デスクワークで長時間座った後や、車から降りる時に、同様の痛みが走り、歩き始めが非常につらい。さすがにこれはおかしいと感じ、私は近所の整形外科を受診することにしました。レントゲン検査では、骨に異常は見当たりませんでした。医師は、私の痛むかかとを入念に押し、「ここが痛いですか?」と確認しました。そこは、まさに痛みの中心でした。「典型的な足底腱膜炎ですね。急に運動を始めたことと、クッション性のないシューズが原因でしょう」と、診断が下されました。その日から、私の地道な治療が始まりました。まず、炎症を抑えるための湿布と、痛みが強い時のための飲み薬。そして、理学療法士の指導のもと、足の指でタオルをたぐり寄せる運動や、アキレス腱を伸ばすストレッチを、毎日欠かさず行いました。ジョギングはしばらく中止し、普段履く靴も、衝撃吸収性の高い、しっかりとしたスニーカーに全て買い替えました。痛みが完全に消え、朝の第一歩の恐怖から解放されるまでには、実に半年以上の歳月を要しました。たかがかかとの痛み、と侮っていた自分を猛省すると同時に、私たちの体を毎日支えてくれている、足の裏の小さな組織の重要性を、あの強烈な痛みと共に、骨の髄まで思い知らされた経験でした。
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夏の腹痛で病院へ、何科へ行けば安心か
夏のつらい腹痛。数日経っても治らない、あるいは、痛みがどんどん強くなってくる。そんな時、適切な医療機関を受診することは、正しい診断と治療への第一歩です。では、夏の腹痛で悩んだら、一体、何科の扉を叩けば良いのでしょうか。その症状によって、いくつかの選択肢が考えられます。まず、最も一般的で、幅広い腹痛の原因に対応できるのが、「消化器内科」です。消化器内科は、食道から胃、腸、そして肝臓、胆嚢、膵臓といった、消化器全般の専門家です。夏場に多い、感染性胃腸炎や、冷えによる腸の機能低下はもちろんのこと、胆石症や急性膵炎といった、より専門的な診断が必要な病気まで、包括的に診てくれます。腹痛に加えて、下痢や嘔吐、胃もたれといった、消化器系の症状が中心である場合は、まず消化器内科を受診するのが、最も確実な選択と言えるでしょう。次に、かかりつけの「内科」や「総合内科」も、最初の相談窓口として、非常に頼りになる存在です。腹痛だけでなく、発熱や倦怠感など、全身の症状が伴う場合、体全体を総合的に診てくれる内科医が適しています。そこで、食中毒が疑われる、あるいは、より専門的な検査が必要だと判断されれば、適切な専門科や、提携病院へスムーズに紹介してくれます。また、女性の場合、下腹部の痛みが、婦人科系の病気である可能性も、常に考えておく必要があります。月経周期との関連性や、不正出血を伴う場合は、「婦人科」を受診すべきです。夏場は、体の抵抗力が落ちやすく、骨盤腹膜炎などを起こしやすくなることもあります。そして、排尿時の痛みや、頻尿、血尿といった、泌尿器系の症状を伴う腹痛の場合は、「泌尿器科」が専門となります。夏場は、脱水から尿路結石を発症しやすい季節でもあります。どの科を受診すれば良いか、どうしても判断に迷う場合は、まずは、かかりつけ医か、最も症状が広い範囲をカバーしている、消化器内科に相談するのが良いでしょう。大切なのは、自己判断で重症化させてしまう前に、専門家の助けを借りることです。
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胃が痛い時に行くべき診療科とその選び方
キリキリとした差し込むような痛み、あるいは、どんよりと重苦しい不快感。胃の痛みは、多くの人が経験するありふれた症状ですが、その原因は様々です。いざ、つらい痛みで病院へ行こうと思った時、「この症状は、一体何科で相談すれば良いのだろう」と迷ってしまうことは少なくありません。適切な診療科を選ぶことは、迅速な診断と効果的な治療への第一歩です。胃の痛みを診る中心的な役割を担うのは、「消化器内科」です。消化器内科は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化管と、肝臓、胆嚢、膵臓といった、消化に関わる臓器全般の病気を専門とする診療科です。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、そして胃がんなど、胃の痛みを引き起こす多くの病気が、この診療科の対象となります。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)などの専門的な検査を用いて、胃の粘膜の状態を直接観察し、正確な診断を下すことができます。次に、一般的な「内科」や「総合内科」、あるいは、普段から通っている「かかりつけ医」も、最初の相談窓口として非常に適しています。特に、胃の痛みだけでなく、発熱や咳、全身の倦怠感といった、他の症状も伴う場合は、体全体を総合的に診てくれる内科医が頼りになります。そこで、より専門的な検査が必要と判断されれば、消化器内科へ紹介してもらう、という流れがスムーズです。また、ストレスが原因で胃の痛みが起きていると考えられる場合は、「心療内科」が選択肢となることもあります。検査をしても器質的な異常が見つからないにもかかわらず、痛みが続く場合、心療内科では、心理的な側面からのアプローチで、症状の緩和を目指します。そして、見逃してはならないのが、胃以外の臓器が原因で、みぞおちに痛みを感じるケースです。例えば、「胆石症」や「急性膵炎」、そして、最も危険なのが「心筋梗塞」です。胸の圧迫感や、背中への放散痛、冷や汗などを伴う場合は、迷わず循環器内科や救急外来を受診する必要があります。
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耳鼻咽喉科へ行くべき咳の見分け方
長引く咳に悩まされた時、多くの人は内科や呼吸器内科を思い浮かべますが、実はその咳の原因が「鼻」や「喉」にあるケースは、決して少なくありません。このような場合、呼吸器の専門家ではなく、鼻と喉の専門家である「耳鼻咽喉科」を受診することが、問題解決への最も早い近道となります。では、どのような症状があれば、耳鼻咽喉科を訪れるべきなのでしょうか。その見分け方のポイントは、「咳以外の、鼻や喉の随伴症状」にあります。まず、最も代表的なのが、「鼻水」や「鼻づまり」を伴う咳です。特に、粘り気のある、色のついた鼻水が続く場合は、「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」、いわゆる蓄膿症の可能性があります。副鼻腔で起きた炎症によって作られた膿を含んだ鼻水が、喉の奥へと流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」となり、これが気管を刺激して、痰が絡んだような、湿った咳を引き起こすのです。日中は鼻をかむことで排出できますが、就寝中は無意識に喉に流れ込み続けるため、特に、朝起きた時に咳き込むことが多いのが特徴です。同様に、「アレルギー性鼻炎」でも、水のような鼻水が後鼻漏となり、咳の原因となることがあります。次に、「喉の痛みやイガイガ感、声がれ」が、咳と共に続いている場合も、耳鼻咽喉科の領域です。喉の奥、鼻と喉の境目にある「上咽頭」に、慢性的な炎症が起きている(慢性上咽頭炎)と、その刺激で咳が出やすくなります。また、声帯にポリープができていたり、炎症があったりする場合も、声がれと共に、咳払いを繰り返すような症状が現れます。耳鼻咽喉科では、内視鏡(ファイバースコープ)を使って、鼻の奥から喉、声帯までを直接観察することができるため、これらの病変を正確に診断することが可能です。さらに、「咳をしている時に、片方の耳が痛む」といった症状がある場合も、耳と喉が耳管で繋がっているため、関連を調べる必要があります。このように、咳だけでなく、鼻水、鼻づまり、喉の違和感といった症状が、パズルのピースのように組み合わさっている場合は、その原因が鼻や喉にある可能性を強く疑い、耳鼻咽喉科の専門医に相談してみてください。
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咳が止まらない時に考えられる主な病気
二週間以上続く、しつこい咳。それは、体が発している何らかの異常を知らせるサインかもしれません。単なる風邪の治りかけと片付けてしまう前に、長引く咳の背後に隠れている可能性のある、いくつかの代表的な病気を知っておくことが重要です。まず、最も頻度が高い原因の一つが、「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」です。これは、風邪やインフルエンザ、アールエスウイルスなどの呼吸器感染症にかかった後、ウイルスはいなくなったにもかかわらず、咳だけが3週間以上にわたって続く状態を指します。ウイルスとの戦いで、気道の粘膜が傷つき、過敏になっているために、少しの刺激で咳が出てしまうのです。次に、近年増加しているのが「咳喘息(せきぜんそく)」です。これは、喘息(気管支喘息)の一種ですが、喘息特有の「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴や呼吸困難はなく、唯一の症状が、長引く空咳(からぜき)であるのが特徴です。特に、夜間から明け方にかけて、あるいは、冷たい空気やタバコの煙、会話などで咳が悪化する傾向があります。これを放置すると、本格的な気管支喘息に移行することもあるため、早期の治療が重要です。鼻の症状を伴う場合は、「副鼻腔炎(蓄膿症)」や「アレルギー性鼻炎」が原因となっている可能性も高いです。鼻で作り出された粘り気のある鼻水が、喉の奥に落ちる「後鼻漏(こうびろう)」となり、それが気管を刺激して、痰が絡んだような湿った咳を引き起こします。また、胸焼けや、酸っぱいものがこみ上げてくる感じがある場合は、「逆流性食道炎」が咳の原因となっていることもあります。胃酸が食道に逆流し、その刺激が神経を介して、咳を誘発するのです。その他にも、百日咳、マイコプラズマ肺炎といった特定の感染症や、降圧薬(ACE阻害薬)の副作用、そして頻度は低いですが、肺がんや肺結核といった、重篤な病気が隠れている可能性もゼロではありません。このように、長引く咳の原因は多岐にわたります。自己判断はせず、専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩です。
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子どもの風邪で迷ったら何科へ行く?
子どもの突然の発熱や咳、鼻水。特に、まだ言葉で症状をうまく伝えられない小さなお子さんの場合、保護者は大きな不安を感じるものです。そんな時、どの病院に連れて行けば良いのか、診療科選びに迷うこともあるでしょう。子どもの風邪における、病院選びの基本を知っておきましょう。まず、子どもの体調不良で、第一に頼るべきなのは「小児科」です。小児科医は、新生児から思春期までの、子どもの成長と発達、そして病気の全てを専門とするエキスパートです。子どもは、大人とは体のつくりも、病気の進行の仕方も異なります。また、薬の量も、体重や年齢に応じて、きめ細かく調整する必要があります。小児科医は、これらの子どもの特性を熟知しており、風邪の症状の裏に隠れた、子ども特有の病気を見つけ出すことにも長けています。まずは、信頼できるかかりつけの小児科を見つけておくことが、何よりも安心に繋がります。しかし、症状によっては、「耳鼻咽喉科」が非常に頼りになる場合があります。例えば、鼻水や鼻づまりがひどく、夜も眠れない、あるいは中耳炎を繰り返しているようなケースです。耳鼻咽喉科では、専用の器具で鼻水を吸引してくれたり、耳の中の状態を詳しく診てくれたりします。また、ゼロゼロ、ケンケンといった、犬の鳴き声のような咳(クループ症候群)が出る場合も、喉頭という喉の奥の専門家である耳鼻咽喉科が適しています。どちらを受診すべきか迷った時の簡単な目安は、熱や全身のだるさが主症状なら小児科、鼻水や喉の痛みが主症状なら耳鼻咽喉科、と考えると良いでしょう。もちろん、小児科を受診して、そこで耳鼻咽喉科的な処置が必要と判断されれば、紹介してもらうことも可能です。大切なのは、保護者の自己判断で様子を見すぎないこと。特に、ぐったりして元気がない、水分が摂れない、呼吸がおかしい、けいれんを起こした、といった場合は、診療時間外であっても、救急外来を受診する必要があります。
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胃が痛い時に考えられる主な病気
「胃が痛い」と一言で言っても、その痛みの性質や、伴う症状によって、考えられる病気は様々です。自分の症状をよく観察し、どのような病気の可能性があるのかを知っておくことは、適切な診療科を選び、医師に症状を伝える上で、非常に役立ちます。まず、急に始まったキリキリとした痛みであれば、「急性胃炎」が考えられます。暴飲暴食や、アルコールの飲み過ぎ、ストレス、あるいは鎮痛剤の副作用などが引き金となり、胃の粘膜がただれて炎症を起こす状態です。吐き気や胃もたれを伴うこともあります。痛みが、食事中や食後、あるいは空腹時に、周期的に現れる場合は、「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」の可能性があります。これらは、胃酸によって、胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついてしまった状態で、悪化すると出血(吐血や下血)や、穿孔(胃に穴が開く)といった、重篤な状態に至る危険性があります。ピロリ菌の感染が、大きな原因の一つとされています。胸のあたりが焼けるように熱い感じ(胸焼け)や、酸っぱいものがこみ上げてくる感じ(呑酸)を伴う、みぞおちの痛みであれば、「逆流性食道炎」が疑われます。胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。食後すぐに横になる習慣や、肥満、加齢などが原因となります。特に、検査をしても、胃に潰瘍や炎症といった、目に見える異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれや、食後の膨満感、みぞおちの痛みが慢性的に続く場合は、「機能性ディスペプシア」と診断されることがあります。これは、胃の運動機能の異常や、知覚過敏が原因と考えられており、ストレスが大きく関与していると言われています。また、感染性の「ウイルス性胃腸炎」でも、腹痛、下痢、嘔吐と共に、胃の痛みが現れます。そして、見逃してはならないのが、「胃がん」です。初期の胃がんは、自覚症状がほとんどありませんが、進行すると、持続的な胃の痛みや不快感、食欲不振、体重減少といった症状が現れることがあります。これらの病気は、症状だけでは区別がつきにくいため、正確な診断のためには、胃カメラなどの専門的な検査が不可欠です。