風邪をひいて体調は悪いけれど、仕事が休めない。小さな子どもがいて、病院へ連れて行くのが大変。あるいは、院内での二次感染が心配。そんな、現代人ならではの悩みに応える、新しい医療の形として、「オンライン診療」が注目を集めています。風邪のような、比較的軽度な症状の場合、このオンライン診療は、非常に有効な選択肢となり得ます。オンライン診療の最大のメリットは、その「利便性」です。スマートフォンやパソコンを使い、自宅や職場にいながら、ビデオ通話などを通じて、医師の診察を受けることができます。病院へ行くための移動時間や、待合室での長い待ち時間から解放されるのは、体調が優れない時には、何よりの助けとなります。また、他の患者と接触することがないため、インフルエンザや新型コロナウイルスなどが流行している時期でも、院内感染のリスクを心配する必要がありません。診察後は、処方箋が自宅近くの薬局にファックスなどで送られ、薬を受け取ることができます。薬局によっては、薬の宅配サービスを行っている場合もあります。このように、非常に便利なオンライン診療ですが、もちろん「限界」もあります。最大のデメリットは、医師が患者の体に直接触れる「触診」や、聴診器で音を聞く「聴診」ができないことです。そのため、得られる情報が限られ、診断の精度が対面診療に劣る可能性があります。喉の奥を詳しく見たり、迅速検査を行ったりすることもできません。したがって、オンライン診療が適しているのは、症状が比較的軽く、問診だけで診断がある程度可能な、一般的な風邪などのケースです。高熱が続いている、呼吸が苦しい、激しい痛みを伴うといった、重症が疑われる場合は、オンライン診療ではなく、必ず対面での診察を受ける必要があります。オンライン診療は、万能な解決策ではありません。しかし、そのメリットとデメリットを正しく理解し、対面診療と賢く使い分けることで、私たちの医療へのアクセスを、より柔軟で、身近なものにしてくれる、心強いツールとなるでしょう。