ある朝、目が覚めたら声が出ない。あるいは、風邪をひいた後から、声がかすれて元に戻らない。そんな「声が出ない」という症状に直面した時、多くの人が「何科を受診すれば良いのだろう?」と迷ってしまうかもしれません。内科なのか、それとも別の専門科なのか。その問いに対する最も的確な答え、それは「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、そして喉(咽頭・喉頭)の専門家です。声は、喉の奥にある「声帯」という二本のひだが振動することによって生まれます。声が出ない、あるいは声がかすれるといった症状のほとんどは、この声帯に何らかの異常が起きていることが原因です。耳鼻咽喉科には、「喉頭ファイバースコープ」という、鼻から細いカメラを入れて、声帯の状態を直接、鮮明な映像で観察するための専門的な検査機器があります。これにより、声帯が炎症で赤く腫れているのか、ポリープや結節ができているのか、あるいは動きが悪くなっていないかなどを、その場で正確に診断することができるのです。風邪による急性声帯炎、声の使いすぎによる声帯ポリープ、そして稀ではありますが、反回神経麻痺や喉頭がんといった、より深刻な病気の初期症状である可能性も考えられます。これらの病気は、内科の一般的な診察では見つけることが困難です。声のトラブルは、声の専門家である耳鼻咽喉科医に診てもらうのが、最も確実で、そして最も安全な選択です。もし、他の科への受診が必要な場合でも、耳鼻咽喉科医が適切に判断し、紹介してくれます。何科に行くべきか迷ったら、まずは「声の総合窓口」である耳鼻咽喉科の扉を叩くこと。それが、的確な診断と治療への最短ルートなのです。