夏の腹痛は、その多くが、夏バテや、軽い胃腸炎によるものですが、中には、迅速な対応が必要な、危険な病気が隠れている可能性もあります。「いつもの夏の不調だろう」という自己判断が、時に、深刻な事態を招くこともあります。特に、夏場に注意すべき、いくつかの病気を知っておきましょう。まず、高温多湿な環境でリスクが高まるのが、「細菌性の食中毒」です。O-157などの腸管出血性大腸菌や、カンピロバクター、サルモネラ菌といった細菌は、夏場に食品の中で増殖しやすくなります。これらの細菌に感染すると、激しい腹痛と共に、水様性あるいは血性の下痢、嘔吐、そして高熱といった、ウイルス性胃腸炎よりも、重篤な症状が現れることが多くなります。特に、便に血が混じる(血便)場合は、危険なサインです。バーベキューでの加熱不十分な肉や、作り置きの料理など、原因に心当たりがある場合は、速やかに内科や消化器内科を受診してください。次に、意外と見過ごされがちですが、夏場に多いのが「尿路結石」です。夏は、汗で大量の水分が失われるため、尿が濃縮され、腎臓や尿管に石ができやすくなります。この石が尿管に詰まると、脇腹から下腹部、背中にかけて、突然、転げ回るほどの激しい痛み(疝痛発作)が生じます。血尿を伴うことも多く、泌尿器科の受診が必要です。また、高齢者では、脱水によって血液がドロドロになり、腸へ血液を送る動脈が詰まってしまう「虚血性大腸炎」のリスクも高まります。これは、突然の左下腹部痛と、それに続く下痢、血便が特徴です。そして、若い女性で、下腹部に激しい痛みがある場合は、子宮外妊娠の破裂や、卵巣嚢腫の茎捻転といった、婦人科系の救急疾患の可能性も、常に念頭に置く必要があります。これらの病気は、いずれも、我慢できるレベルを超えた激しい痛みや、高熱、血便といった、危険なサインを伴います。「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、躊躇せず、医療機関に相談する勇気が、何よりも大切です。
腹痛で病院へ、夏に注意すべき病気