貧血と診断された後、病院ではどのような治療が行われるのでしょうか。その治療法は、貧血の原因や重症度によって異なりますが、最も一般的な「鉄欠乏性貧血」の場合、治療の三本柱となるのが、「鉄剤による薬物療法」「鉄剤の注射・点滴」、そして「食事指導」です。まず、治療の基本となるのが、「鉄剤(経口鉄剤)」の内服です。これは、体内で不足している鉄分を、錠剤やシロップといった形で、直接口から補給する方法です。医師の処方に基づき、毎日、決められた量の鉄剤を服用します。ただし、鉄剤にはいくつかの副作用が出やすいという特徴もあります。最も多いのが、胃のむかつきや吐き気、腹痛といった胃腸症状です。また、便が黒くなったり、便秘や下痢になったりすることもあります。これらの副作用が辛い場合は、自己判断で服用を中止するのではなく、必ず医師に相談してください。薬の種類を変更したり、服用方法を工夫したりすることで、症状が改善される場合があります。次に、鉄剤の内服が困難な場合や、消化管からの鉄の吸収が悪い場合、あるいは極めて重度の貧血で、早急に鉄分を補充する必要がある場合には、「鉄剤の注射・点滴」が行われます。血管に直接、鉄剤を注入するため、経口薬よりも速やかに、そして確実に、体内の鉄分を増やすことができます。治療効果は高いですが、頻繁に通院が必要になる場合もあります。そして、これらの薬物療法と並行して、非常に重要なのが「食事指導」です。薬で鉄分を補うだけでなく、日々の食事から、鉄分を効率的に摂取し、鉄分が不足しにくい体質へと改善していくことが、再発を防ぐための鍵となります。管理栄養士などから、鉄分を多く含む食品(レバー、赤身の肉や魚、ほうれん草や小松菜、ひじきなど)や、鉄分の吸収を助ける「ビタミンC」(果物や野菜)、そして逆に吸収を妨げる「タンニン」(コーヒーや紅茶、緑茶)などについて、具体的なアドバイスを受けます。貧血の治療は、数日で終わるものではありません。血液検査の数値が正常に戻った後も、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が十分に回復するまで、数ヶ月単位で、根気よく治療を続ける必要があります。自己判断で治療を中断してしまうと、すぐにまた貧血状態に戻ってしまうため、医師の指示に従って、最後まで治療をやり遂げることが、何よりも大切なのです。
病院での貧血治療薬と注射と食事指導