「声が出ない」という症状は、多くの場合、風邪による喉の炎症などが原因であり、数日で回復に向かいます。しかし、その背後には、時に、一刻を争う、命に関わる深刻な病気が隠れている可能性も、決してゼロではありません。ここでは、通常の声がれとは一線を画す、すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診すべき「危険なサイン」について解説します。これらのサインを見逃さないことが、あなたや、あなたの大切な人の命を救うことに繋がります。まず、最も警戒すべき危険なサインが、「呼吸困難」を伴う場合です。声が出ない、あるいは犬が吠えるようなかすれた咳(犬吠様咳嗽)と共に、「息が苦しい」「息を吸う時に、ヒューヒュー、ゼーゼーという音がする(喘鳴)」「喉が締め付けられるような感じがする」といった症状がある場合は、喉頭(のど仏のあたり)や、その周辺が、重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)や、感染症によって、極端に腫れ上がっている(喉頭浮腫・急性喉頭蓋炎)可能性があります。これにより、空気の通り道である気道が急速に狭くなり、窒息に至る危険性が極めて高い、非常に緊急性の高い状態です。次に、「食べ物や飲み物がうまく飲み込めない(嚥下障害)」や、「よだれが口から大量に垂れてくる」といった症状も、喉の奥が重度に腫れていることを示唆する危険なサインです。また、「声が出ない」という症状に加えて、「ろれつが回らない」「片方の手足が動かしにくい、しびれる」「物が二重に見える」「激しい頭痛」といった、神経に関連する症状が突然現れた場合も、脳梗塞や脳出血といった、脳血管障害の可能性があります。声を出すための神経が、脳の障害によって麻痺しているのです。これもまた、一分一秒を争う緊急事態です。これらの危険なサインが見られた場合は、「明日まで様子を見よう」などと、決して自己判断してはいけません。それは、命取りになりかねない、極めて危険な判断です。迷わず、すぐに救急車を呼ぶか、最寄りの救急医療機関を受診してください。たかが声がれと侮らない。その冷静な判断が、最悪の事態を防ぐための、最大の鍵となるのです。