2歳になる息子の体に、最初の水いぼを見つけたのは、お風呂でのことだった。脇の下に、光沢のある小さなぷつっとしたものが一つ。最初は気にしていなかったが、一週間後には、それが三つに増えていた。小児科で「水いぼですね」と診断された。医師は、「自然に治るものだから、無理に取らなくてもいいですよ。ただ、掻き壊すと増えるので、保湿をしっかりしてあげてください」と、穏やかに言った。私は、その言葉を信じ、「自然治癒」の道を選んだ。アトピー体質で、肌が乾燥しがちだった息子のために、毎日、朝晩と保湿剤を丁寧に塗った。しかし、息子の水いぼは、私たちの願いとは裏腹に、ゆっくりと、しかし確実に、その勢力を広げていった。脇の下から、胸、お腹、そして腕の内側へ。かゆみはないはずなのに、乾燥肌のせいか、息子は無意識に体を掻いてしまう。そのたびに、私の心には「やっぱり、あの時取っておけばよかったのかもしれない」という後悔の念がよぎった。水いぼの数が増えるにつれて、私の悩みも深まっていった。公園で他のママ友に会うと、「そのぷつぷつ、うつらない?」と、遠回しに聞かれることもあった。悪気がないのは分かっていても、その一言一言が、私の心をチクリと刺した。そして、来年から通う予定の幼稚園が、プール活動に熱心な園だと知った時、私の決心は固まった。「このままでは、息子がプールに入れないかもしれない。周りの子に気を使わせたり、嫌な思いをさせたりするかもしれない」。私は、息子を連れて、皮膚科の門を叩いた。皮膚科の医師は、増え続ける水いぼと、私の悩みを聞いた上で、「これだけ数が増えているなら、一度リセットする意味で、取りましょうか。痛くないように、麻酔のテープを使いましょう」と提案してくれた。治療当日、麻酔テープのおかげで、息子は少し泣いただけで、なんとか全ての水いぼを取り終えることができた。痛々しい姿に胸が痛んだが、数日後、傷が癒えた息子の肌を見て、私は心から安堵した。水いぼの治療に、絶対の正解はないのかもしれない。しかし、息子のこれからの集団生活と、私の心の平穏のために、あの時の「取る」という決断は、私たち親子にとって、最良の選択だったのだと、今なら思える。