それは、残業続きで心身ともに疲れ果てていた、ある平日の夜のことでした。夕食を終え、ソファでくつろいでいると、みぞおちのあたりに、これまで感じたことのないような、焼け付くような激痛が、突然襲いかかってきました。まるで、熱した鉄の棒を、胃に突き刺されたかのような痛み。あまりの激しさに、息ができず、冷や汗が全身から噴き出してきました。最初は、ただの胃けいれんだろうと、体を丸めて痛みが過ぎ去るのを待っていました。しかし、痛みは一向に和らぐ気配がなく、むしろ、波のように、繰り返し襲ってきます。市販の胃薬を飲もうにも、体を起こすことすらままなりません。このままではまずい、と本能的な恐怖を感じた私は、深夜にもかかわらず、家族に頼んで、救急外来へ連れて行ってもらうことにしました。病院の待合室で、痛みに耐えながら待つ時間は、永遠のように長く感じられました。診察室に呼ばれ、医師に症状を伝えると、すぐに血液検査と腹部のエコー検査が行われました。そして、告げられた診断は、「急性胃炎」ではなく、「急性胆石発作」でした。胆嚢にできていた小さな石が、何かの拍子に胆嚢の出口に詰まり、激しい痛みを引き起こしていたのです。私自身、健康診断で「胆石がある」と指摘されてはいましたが、無症状だったため、完全に油断していました。医師からは、「暴飲暴食や、脂肪分の多い食事、そしてストレスが引き金になることが多いんですよ」と説明を受けました。その日の夜は、点滴で痛み止めと炎症を抑える薬を投与してもらい、なんとか痛みのピークを乗り越えることができました。後日、改めて消化器外科を受診し、腹腔鏡による胆嚢の摘出手術を受けることになりました。あの夜の経験は、私にとって大きな教訓となりました。胃だと思い込んでいた痛みが、実は全く別の臓器からのSOSだったこと。そして、自己判断で我慢することの恐ろしさ。体の異変を感じたら、たとえ夜中であっても、専門家の助けを求める勇気が、いかに大切であるかを、身をもって知った出来事でした。
私が胃の激痛で救急外来に駆け込んだ夜