片足のしびれと言っても、その症状が「足のどの部分」に現れるかによって、圧迫されている神経や、原因となっている病気を、ある程度推測することができます。自分のしびれの範囲を正確に把握し、医師に伝えることは、スムーズな診断の大きな助けとなります。まず、「お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、そして足の外側や足先」にかけて、まるで電線のようにしびれや痛みが走る場合。これは「坐骨神経痛」と呼ばれる症状の典型的なパターンです。坐骨神経は、人体で最も太く長い末梢神経で、腰から出て、お尻、太ももの後ろを通り、足先まで伸びています。この坐骨神経の通り道のどこかで圧迫が起こると、その神経が支配する領域全体に、症状が広がります。原因としては、「腰椎椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」、「梨状筋症候群」などが、最も多く考えられます。次に、「太ももの前側や、すねの内側」がしびれる場合。これは、坐骨神経とは別の、大腿神経という神経が、腰の上の方(主に第2~第4腰椎)で圧迫されている可能性を示唆します。比較的高位の椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症が原因となり得ます。一方、「足の裏」や「足の指先」だけが、ピンポイントでしびれる場合。これは、腰の問題ではなく、足首にある「足根管」というトンネルで神経が圧迫される「足根管症候群」の可能性があります。長時間の立ち仕事や、足首の捻挫などが引き金になることがあります。また、糖尿病性神経障害の初期症状も、足の指先のジンジンとしたしびれから始まることが多いです。そして、しびれが特定の「帯状」の範囲、例えば、脇腹から太ももの外側にかけて、といったように現れる場合は、「帯状疱疹」の初期症状である可能性も考えられます。この場合、数日後に、そのしびれの範囲に一致して、赤い発疹や水ぶくれが出現します。このように、しびれの分布(デルマトーム)は、神経の圧迫部位を特定するための、重要な地図となります。自分の症状を観察する際に、ぜひ意識してみてください。