急な胃の痛みや不快感に見舞われた時、すぐに病院へ行けない場合の、心強い味方が、ドラッグストアで手に入る「市販の胃薬」です。しかし、棚に並んだ数多くの製品は、それぞれに特徴があり、自分の症状に合わないものを選んでしまうと、効果がないばかりか、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。市販薬を上手に活用するためには、その成分と働きを正しく理解することが重要です。市販の胃薬は、その主な作用によって、いくつかのタイプに分類されます。まず、胃酸の出過ぎが原因で起こる、キリキリとした痛みや胸焼けに効果的なのが、「胃酸分泌抑制薬」と「制酸薬」です。「胃酸分泌抑制薬」には、「H2ブロッカー」と呼ばれる成分(ガスター10など)が含まれており、胃酸の分泌そのものを強力に抑えます。「制酸薬」は、すでに出てしまった胃酸を、アルカリ性の成分で中和することで、速やかに症状を和らげます。次に、胃の粘膜が荒れてしまっている場合に有効なのが、「胃粘膜保護修復薬」です。胃の粘膜の表面に膜を張って、胃酸の攻撃から守ったり、荒れた粘膜の修復を促したりする働きがあります。空腹時の痛みや、ストレス性の胃炎に適しています。一方、食べ過ぎや飲み過ぎによる、胃もたれや消化不良が主な症状の場合は、「消化薬」が適しています。脂肪やタンパク質、炭水化物の分解を助ける「消化酵素」が配合されており、弱った胃の働きをサポートしてくれます。そして、胃の動きそのものが悪くなっていると感じる場合は、「健胃薬」や「胃腸運動改善薬」が選択肢となります。生薬成分などが、胃の蠕動運動を活発にし、内容物の排出を促します。このように、一口に胃薬と言っても、そのアプローチは様々です。自分の症状が、「胃酸の攻撃」によるものなのか、「胃の防御力の低下」によるものなのか、あるいは「胃の運動機能の低下」によるものなのかを、見極めることが、正しい薬選びの第一歩です。そして、最も大切なことは、市販薬はあくまで「一時的な症状緩和」のためのものである、ということです。数日間服用しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断を続けず、必ず医療機関を受診してください。
胃の痛みを和らげる市販薬の正しい選び方