喉の奥に赤いぶつぶつを見つけた際、多くの患者さんは「癌ではないか」という強い不安を抱いて診察室に訪れます。しかし、耳鼻咽喉科専門医の立場から申し上げれば、そのほとんどは良性のリンパ濾胞増殖、あるいはウイルス感染による一時的な変化です。大切なのは、パニックになることではなく、その症状を「時間軸」と「全身症状」で整理して、適切なタイミングで受診することです。まず、ぶつぶつに加えて三十八度以上の発熱、激しい喉の痛み、首のリンパ節の腫れがある場合は、溶連菌感染症や伝染性単核球症といった、特定の治療を必要とする感染症の可能性が高いため、早急な受診が必要です。特に大人の溶連菌は放置すると腎炎などの合併症を招く恐れがあるため、迅速検査が可能な医療機関を選んでください。次に、熱はないけれど喉が常にイガイガし、ぶつぶつが数週間単位で消えないというケース。これは「慢性咽頭炎」の状態であり、背景に空気の乾燥や喫煙、あるいは職業的な声の酷使が隠れていることが多いです。この段階で私たちが注目するのは、ぶつぶつの形状です。表面が滑らかで、粘膜と同じような色調であれば心配いりませんが、表面がカリフラワー状に凹凸があったり、一箇所だけが異様に硬く盛り上がっていたり、あるいは周囲の血管が不自然に拡張している場合は、乳頭腫や初期の咽頭癌、さらには梅毒などの特殊な感染症を疑い、精密な内視鏡検査や組織採取を行います。また、受診の科選びについてもアドバイスがあります。喉のぶつぶつに関しては、内科よりも耳鼻咽喉科を第一選択にすべきです。内科は全身を診るプロですが、耳鼻咽喉科には喉の奥を数ミリ単位で拡大して観察できるファイバースコープがあり、声帯の動きや咽頭の側壁の状態まで詳細に把握できるからです。診察の際には、「いつから気づいたか」「痛みはあるか」「声は枯れていないか」「タバコやお酒の習慣はどうか」を整理して伝えていただけると、診断の精度が格段に上がります。喉は呼吸と食事という生命維持の要所であると同時に、精神的なストレスが「ヒステリー球」という形で違和感として現れやすい繊細な場所でもあります。ぶつぶつという視覚的な情報に惑わされすぎず、専門医の客観的な評価を受けることで、不安を安心へと変えていきましょう。私たちは、あなたが再び美味しく食事を摂り、朗らかに会話を楽しめるようになるためのサポーターでありたいと考えています。
喉の異常を見逃さないための専門医による受診指導