指を切ったとき、それが単なる表皮の傷であれば皮膚科で十分かもしれませんが、もし深い切り傷であれば、整形外科、中でも「手外科」という専門領域を選択することが快復の質を劇的に変えることになります。手は人体の中で最も複雑な構造を持つ部位の一つであり、指一本を動かすためにも、前腕から繋がる長い腱と、それを通す鞘、そしてミリ単位の神経が連動しています。整形外科を受診した際、医師がまず行うのは、外見的な止血処置だけではありません。レントゲン撮影によって、刃物が骨にまで達して欠けていないか、あるいは関節内に破片が残っていないかを確認します。次に、局所麻酔を施した上で、傷口の奥までを丁寧に洗浄(デブリドマン)し、死んだ組織や汚れを完全に除去します。これは、後に骨髄炎や深刻な感染症を引き起こさないための極めて重要なステップです。さらに、顕微鏡下での手術が必要なケースも珍しくありません。例えば、指の横を通る指神経や指動脈が切断されている場合、肉眼では見えないほど細い糸を用いて血管や神経を繋ぎ合わせる「マイクロサージャリー」が実施されます。この高度な技術を提供できるのが、手外科を専門とする整形外科の強みです。また、腱が損傷している場合には、単純に縫い合わせるだけでなく、術後のリハビリテーションを見据えた強固な固定と、一方で癒着を防ぐための早期運動療法のバランスが求められます。患者さんが「指を動かせれば何科でもいい」と考えるのは危険で、不適切な診療科で不完全な処置を受けると、数ヶ月後に指が曲がったまま固まったり(拘縮)、常に電気が走るような痛み(神経痛)に悩まされたりすることになります。整形外科での治療プロセスには、初期消火としての外科処置だけでなく、理学療法士による機能回復訓練までが含まれています。指の怪我は、縫って終わりではありません。再び以前と同じようにキーボードを打ち、楽器を演奏し、愛する人と手を繋ぐことができるようになるまでが治療のゴールです。もし、あなたが指を切った際、その痛みが深部から響くようなものであったり、指先の血の気が引いて白くなっていたりするなら、迷わずマイクロサージャリーに対応可能な整形外科を探してください。専門家の手によって精密に修復された指は、驚くほどの生命力で再びあなたの生活を支える道具へと戻っていくはずです。知識を持って正しい門を叩くことが、一生付き合う自分の手に対する最大の誠実さなのです。
手の専門家が診る指の損傷と整形外科での精密な治療プロセス